ストーリー類型『英雄の旅:ヒーローズジャーニー』を考える【物語の根幹】
やあ、葵です。(@Aoi_Yamato_100)
今回はストーリーについてのお話です。
ストーリー類型って実はいろいろあるんですが、中でも特に重要だと言われるものに、
『英雄の旅』(ヒーローズ・ジャーニー)
と呼ばれるものがあります。
これは神話を研究していたジョゼフ・キャンベルという人が提唱したストーリー類型で、古今東西の神話すべての根底にある物語の基本形とも言われています。
この理論が取り入れられた物語として、かの有名な『スターウォーズ』がよく挙げられるよ。
まあヒーローズ・ジャーニーのくわしい内容については著者であるジョゼフ・キャンベルの著書『千の顔を持つ英雄』や解説を読むのが手っ取り早いので、今回は――
自分の作品『百魔の主』がどれくらい当てはまっているか見ながら紹介してみようと思う!
書籍化させてもらうくらいにはみんなに読んでもらえている物語ですし、ふとこの理論を見つけたときに「あー、当てはまるかも」と思ったところもある。
今後の小説執筆や物語創作の糧にもなりそうということで、興味のある人はお付き合いください。
今回の題材『百魔の主』はこちら
『英雄の旅』について書いたジョゼフ・キャンベルの本
要点をかいつまんだ良解説サイト
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英雄の旅:ヒーローズジャーニーを自作にあてはめながら考えてみる
というわけで、まずはヒーローズジャーニー理論を語る上で欠かせない8個のポイントを挙げておく。
- Calling(天命を知る、受ける)
- Commitment(旅の始まり)
- Threshold(境界線)
- Guardians(メンター、師との出会い)
- Demon(悪魔、最大の試練)
- Transformation(変容)
- Complete the task(課題完了)
- Return home(故郷へ帰る)
いっぱいあるな。(アメリカ語だし)
日本語訳があってよかったな。
Calling(天命を知る、受ける)
天命を知る、受ける、というのは昔ながらのファンタジーにはよくあるパターンです。
わたしの好きなベルガリアード物語では、主人公ガリオンがとある神々の予言書によって『宿命の子』として旅に出なければならなくなったところがまさにこの『天命を知る、受ける』に値します。
百魔の主においては、メレアがフランダーから『魔王』という存在の成り立ちを教えられたときがまさにこれに値するでしょう。
Commitment(旅の始まり)
『旅の始まり』は言葉のとおりです。
天命を知り、その天命を全うする、あるいは対抗するために主人公が動き出します。
『百魔の主』においては、英霊たちが魂の天海にのぼっていったあと、『魔王』の末裔たちに出会い、リンドホルム霊山を下りるところがこの部分にあたります。
Threshold(境界線)
『境界線』は、これだけ書かれるとわかりづらいですが、それまでの『当たり前』を抜け出て、新たな現実に触れることを指していると解しています。
現実=世界
と言い換えてもいいかもしれません。
これも百魔の主においては、主人公メレアがリンドホルム霊山を下りて、下界に関わり始めたところが該当します。
リンドホルム霊山と下界の間にあった境界線が、まさしくメレアにとっての本当の境界線越えだったのでしょう。
Guardians(メンター、師との出会い)
これに関しては百魔の主は順序が異なっています。
メレアは最初にフランダーというメンター(師)と出会いました。
また、その他の人気作品においても、『境界線』を越えたあとにこのメンター(師)に出会うものが少なくないので、順序については厳密でなくても良いと思います。
Demon(悪魔、最大の試練)
境界線をくぐり、世界と関わりはじめ、そしてやってくるのが試練です。
百魔の主においてはいくつか存在しますが、最も大きなものはムーゼッグとの戦いでしょう。
特に、ザイナス荒野において真正面からムーゼッグ軍と戦うことになった個所は、最大の試練だったと思います。
Transformation(変容)
そして試練を経て主人公に訪れる変化。それが『変容』です。
百魔の主においては、ムーゼッグと戦い、そしてその親玉であるセリアスで対話し、改めてメレアの中に芽生えた強い決意。
当初、メレアにはその世界で生きている実感が薄かった。
しかし、ここでようやく『心から』『実感として』この世界に魔王として生きる決意が芽生えます。
これは、試練を経て起こったメレアというキャラクターの最大の変容であったとわたし自身思っています。
Complete the task(課題完了)
そしてついに、ムーゼッグを退けてレミューゼへ到着したメレア。
試練を乗り越え、変容し、あるべき場所へと至る。
『課題完了』はレミューゼについた状態を指します。
Return home(故郷へ帰る)
はてさて、これに関してはまだ百魔の主でも答えが出ていません。
ヒーローズジャーニーでは、主人公が家へ戻るところまでを想定しています。
まあジャーニーというくらいなので、帰ってこその『冒険』なのでしょう。
百魔の主に関してはまだ答えが出ていませんが、有名どころだと、
- 千と千尋の神隠し
- ロード・オブ・ザ・リング
この二つはまさしく故郷へ帰るところまでが描かれます。
そのほかにも帰り着くところまでを物語としている超有名作品はいくつもあります。
物語のカタルシスを得るうえで、とても重要なことなのでしょう。
まとめ
ひとまず自作『百魔の主』についてヒーローズ・ジャーニーをあてはめてみました。
わたしは百魔の主を書いているとき、このヒーローズ・ジャーニーを意識していたわけではありませんが、わたしの創作自体が過去のさまざまな作品の影響を受けていると考えると、至極当然の話なのかもしれません。
こうしてみると、思っていた以上にヒーローズ・ジャーニーに当てはまっててびっくりした。
自分が好きな作品がある人は、ぜひ一度その作品をヒーローズ・ジャーニーにあてはめてみてください。
思いもよらない発見があるかもしれませんよ。