MENU
マンガの連載が始まりました!▼

百魔の主/漫画版

創作研究室(カテゴリー別)
葵大和
ライトノベル作家
カドカワBOOKSから『百魔の主』というファンタジー戦記小説を刊行しています(既刊6冊)。またコミカライズ版が秋田書店のweb漫画サイト『マンガクロス』にて連載中です。執筆歴は15年。最近はブログ書いたりもしています。うんち。
出版作品(小説/カドカワBOOKS)

百魔の主/葵大和

【無料】100人の英霊に育てられた〈魔王〉の物語【マンガ】☚click!

読まれるストーリー作りにはミステリー(謎)が欠かせないって話

  • URLをコピーしました!

やあ、葵です。(@Aoi_Yamato_100

小説や漫画を読む読者に次々とページをめくってもらいたいなら、謎(ナゾ)を作って見せることがもっとも効果的です。

そう改めて思ったのは、なにげなくテレビを見ていたときのことでした。

今回はこの『謎』の力の秘密について、実体験を踏まえて分析してみます。

この記事の著者について(葵大和)
葵です
タップできる目次

先が気になる!答えが知りたい!謎に引っ張られる好奇心

わたしが見ていたテレビ番組は、簡単にいうと『怪奇!不気味な謎特集!』みたいな感じの番組です。

  1. 正体不明の怪奇現象が起こる
  2. その正体を突き止める

突き詰めるとこれだけの番組構成です。

実際、その番組を見たくて見ていたわけではないのですが、ぼんやり内容を追っているうちに内容が気になり出しました。

最終的に、

「その正体とは……!?」

という引きにつられて、ついCMを挟んでその答えまで見てしまいました。

どうしてこんなに先(結果)が気になったんだ……

『つい先が気になって』という感情が湧きおこるかどうか

「つい先が気になって」

この感情は、小説やマンガにおいて読者にページをめくらせたいときに、とても重要な感情です。

物語を楽しんでもらうには、まず読者を引き込む必要があります。

しかし、いったん読者を引き込んだあとも気を抜くわけにはいきません。

作品をしっかり楽しんでもらうためには、その後も継続してページをめくってもらう必要があります。

そこで重要になるのが、今回ふとテレビを見ていて感じた、『つい先が気になった』という感情です。

では、どういうときにこうした感情が湧きおこるのでしょうか。

どうして先が気になった?『不気味な謎』の持つ力

謎といってもいろいろな種類があります。

もっともわかりやすいところでいうと、

  • 好奇心をくすぐられる謎
  • 不気味だから答えを知っておきたい謎

このあたりでしょう。

どちらも「わからない」→「わかりたい(知りたい)」というプロセスは同じです。

好奇心に関しては、たとえば自分が興味のある分野に対し、「もっとこれのことが知りたい」と思う情動を指します。

たとえば、極端な例で言うと、『お金』にまつわる好奇心はものすごく強いですよね。

  • 楽に儲かる話
  • 実はその仕組みは……!

そんなふうに引きを作られると、気になってしまうのが人間のさがです。

まあ実際はそんなウマい話ないがな!!

ちょくちょく現実を叩きつけるのをやめろ。

まあこれ以外にも、好きな趣味の話で、自分が知らないことを引き合いに出されると、気になってしまうことがありますよね。

ですが、こういった好奇心よりもさらに強烈な謎があります。

それがさきほどの②で挙げた、『不気味だから答えを知っておきたい謎』です。

こういった謎の持つ求心力にはすさまじいものがあります。

今回のわたしの実体験がまさにそれに当たるので、また分析していきましょう。

不気味な謎ってどんなもの?

またわたしが見た番組の話に戻ります。

わたしが見たのは、

夜中に自宅の壁からドンドンという大きな音が聞こえる

という謎についてでした。

そこは三階で、外から人が叩くことはできません。

実際に外にカメラを取り付けても、なにかが外から叩いて音を出している様子は見られません。

住宅の構造を調べても、生き物が壁の中を走っているなどもなさそうです。

でも音が鳴ります。

どん、ばたん。

なんかこえぇ!

不気味ですよね。

しかも遠いどこかの地で起こっていることではなくて、もしかしたら実際に自分の家でも起こりそうなことです。

そう思うと、この音の正体を知っておきたくてしかたなくなりました。

この時点ですでにわたしは画面の中の出来事に引きこまれていたわけです。

身近に起こりそうなものであるほど不気味さの効果は強い

人間には、目の前の出来事に共感する力が備わっています。

目の前の出来事を自分に起こった出来事であるかのように感じる力です。(参考書籍:ミラーニューロンの発見 「物まね細胞」が明かす驚きの脳科学

これをエンタメの話に当てはめると、絵がないため想像力が働きやすいメディア媒体である小説が最も共感を誘いやすいと思います。

共感は、身近なところ――つまり実際に自分の周りでも起こりそうなことに対してより強く働きます。

そして今回の場合でいうと、

  1. 理由のわからない謎がある
  2. しかも身近で、自分にも起こりそう(共感)

という流れになります。

そして次に大切になるのが、

不気味(怖い)だから答え(解決方法)を知っておきたい……!

という感情が必ず湧き起こることです。

備えたい、解決したい、安心したい

人は、目の前の不気味な出来事に答えを見出したがる生き物です。

これは本能といってもいいでしょう。

古来より人は「わからないもの」に強い恐怖を覚えながら生きてきました。

  • 暗闇
  • 台風や地震などの自然災害

科学が発達し、その正体がわかるようになる前は、それぞれに架空の姿を与えてとりあえずカタチあるものにしようとすらしてきました。

  • 暗闇→鬼
    ※(鬼は『見えない者』という意味の『隠(おぬ)』が起源であるという説があります)
  • 雷→雷神像
  • 台風→風神像
  • 地震→ナマズの仕業

※余談ですが鬼の起源については独自研究です。大学生の頃に国文学の卒論研究の一環で鬼について調べていました。(→葵大和のプロフィール

それ以外にも、日本における妖怪のたぐいは、わからないものに対する一種の作り出されたモチーフであることがとても多いです。

つまるところ、人間は安心したい生き物なのです。

まとめ:『不気味な謎』こそ読者を引き込む最強のツールである

だからこそ、共感を呼ぶ「不気味な謎」を提示することによって、人間は安心したいがために答えを求めるわけです。

  • 先が見たい
  • どうなるか知りたい

自分の作品(言葉)を通してこんな感情にさせることができれば、読者にページをめくらせることができます。

そういった観点でみれば、ミステリーでよく言われる「冒頭で死体を転がせ」という言葉は、まさしく金言なのかもしれません。

もし自分の作品に『どうにもストーリーに推進力がないなぁ』と思ったときは、ぜひこういった謎があるかどうかを見直してみてください。

そしてもし可能なら、今を生きる読者が共感しそうな不気味な謎をその物語の序盤に組み込んでみると良いでしょう。

健闘を祈る!

余談①:心理学的にも「安全欲求」というものがある

有名な心理学者マズローによる『欲求5段階説』というものがあります。

出典:wikipedia

人間は下層の欲求から満たしていき、最終的には自己実現欲求にいたるというピラミッド図です。

今回の話でいう安心したい欲求というのは下から二番目の「Safety」というところ。

一番下がいわゆる「生理的欲求(食欲・睡眠欲など)」なので、「安心したい欲求」がかなり本能的なものであることがわかります。

余談②:実際に謎の使い方がうますぎて一瞬で読みきった作品はこちら

魔性の小説と呼んでもさしつかえない。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
タップできる目次