世紀末? SF? 巨大生物にファンタジー? 錆喰いビスコめっちゃおもしろい。
第24回電撃小説大賞の中で“一番ぶっとんでいる”と評された≪銀賞≫受賞作。「このライトノベルがすごい!2019」でも総合・新作でダブル1位を取っている最新の人気作。
SFでありながらファンタジーでありつつ、世紀末冒険譚でありながら良質なヒューマンドラマも包含するこの作品の魅力をご紹介。
結論から言うと「読んで損はない」。
独特でありながらたしかな広がりの世界観につかりたいのであれば、ぜひおすすめ。
錆喰いビスコのあらすじと概要
あらすじ
すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる《錆び風》の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。彼は、師匠を救うための霊薬キノコ《錆喰い》を求め旅をしていた。
美貌の少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出すビスコ。行く手に広がる埼玉鉄砂漠、文明を滅ぼした防衛兵器の遺構にできた街、大蛸の巣くう地下鉄の廃線――。過酷な道中で次々に迫る脅威を、ミロの知恵の閃きと、ビスコ必中のキノコ矢が貫く! しかし、その先には邪悪な県知事の奸計が――。(引用元:電撃文庫公式サイト)
これを読んだ最初の一言。

錆喰いビスコの魅力と見どころ
そのほかにも埼玉鉄砂漠やら県知事やら、「これどういう世界観なんだ!?」と最初は思った。
でも気づいたら――
どっぷりつかっていた。
この日本の世紀末的な、スチームパンクの日本版的な、荒れ果てた未来の日本を彷彿とさせる情景描写と語句のセンスが、この作品の魅力のひとつだと思う。
最初は「弓にキノコ? おお、なんかすげえな……」と思ってた。
あれじゃん? 主人公っていったらもっとこう伝説の剣とか、そういうのじゃん?
でもね。
キノコと弓の相性、すごい。
キノコと弓の相乗効果にワクワクする
さまざまな効能を持ったキノコの毒を矢に塗ってどっかんばっかんするんだけど、このキノコの効果が結構戦術的で、不思議と華もあって、読んでるうちにしっくりくるようになる。
普通にカッコイイ。キノコすごい。
「キノコ守り」っていうキノコ毒やキノコ薬の扱いに長けた一族の設定もしっかり練られていて、どこか退廃的な世界観に対してけっして軽くなりすぎず、しっかり溶け込んでいるのがこの作品のすごさを物語っている。
王道でありながらけっして古臭くないキャラとストーリー
王道だ。
王道でありながら、新しい。
もしかしたらこの独特の設定に最初は忌避感を持つ人もいるかもしれない。
でも安心してほしい。
たとえ設定が好みでなくとも十分に楽しめてしまうほどの良質なストーリーが詰め込まれている。
で、テンポの良いストーリーでぐいぐい読み進めているうちに、世界観に対しても「良い……」ってなると思う。
また、主人公は古き良く直情型の熱血漢。
最近は冷静で一歩引いた主人公が多いなか、なんというか昔の王道を感じさせるキャラだが、その中にたしかな正義感や仲間への思いが感じられて、けっしてやすっぽくない。
バックボーンもちゃんとあって、行動の動機も明確なので、読んでてキャラがブレることはほとんどなかった。
あと個人的にパウーが好みドストライクである。(なんだこのポンコツ美人カワイイ)
主人公の相棒となる美少年キャラ(ミロ)もとても魅力的なキャラクターで、パっと見ヒロインらしいヒロインはいないものの、(あれ? このキャラヒロインじゃね? あれまってやっぱヒーローだわ。あれ……?)と、いろんな角度で楽しめるブロマンス作品でもあるとわたしは思う。そう、わたしはブロマンスが好きだ。
文章がクッソ読みやすい
地の文のうまさが尋常でない。
ここっていうときにこれっていう単語が見事に出てくるし、表現の幅が広いなぁ、と同じ作家視点で読んでた。
ほかの数多いる作家と同じように、「、」の使い方に少し特徴があるが、それが読みづらさになることもなく、活字読むのが苦手な人にとってはむしろ読みやすいんじゃないかな、と思う。
設定がやや特異なためか、文章では相当読者のことを考えて描いたんだなぁ、と勝手に納得し、そのたしかな筆力にただただ感嘆するばかりだった。

錆喰いビスコの感想まとめ
ということでこの錆喰いビスコ。
超おすすめである。
個人的にアニメ映えすっごいしそうだなぁと思った。
戦闘シーンも派手でかっこいいし、この作品に登場する世紀末日本の景色とか、いろとりどりのキノコとか、ぜひ美麗な作画と色使いで表現してほしい。