やあ、(脂肪がなかなか削れない)葵です。
今回は小説の推敲に関するお話。
さっき「これもありかなぁ」と気づいたことなのでなんかうまく言えないけど、1冊の中にたくさんの物語と「世界の広がり」を持たせるには、人物や世界の経験を圧縮して込める書き方が重要な気がした。
— 葵大和@『百魔の主』発売中! (@Aoi_Yamato_100) October 17, 2019
丁寧なのは大事なことですが、すべてのシーンを丁寧に書きすぎると読んでほしい部分が相対的にかすんでしまう。
部分的には事実の列挙で簡易的に「そういうことがあった」という経験をキャラクターに蓄積させて、過程として見せたい部分を丁寧に描写する。
— 葵大和@『百魔の主』発売中! (@Aoi_Yamato_100) October 17, 2019
推敲については文章レベルでいくつかお話をしてきましたが、今回の推敲はストーリー(内容)的な推敲のお話です。
どんな話か結論から言うと、
- 必要だけどメインじゃない部分は丁寧に書きすぎない勇気も必要
そんなお話。
小説においては「削り」こそが質を高める最高のプロセスかもしれない
文章の推敲は慣れてしまうと結構機械的に行えます。
くわしくは上で挙げた文章に関する推敲の記事を見てもらえればわかると思うのですが、ストーリー(内容)の推敲はそうはいきません。
意識すべきポイントは、「どこがメインのお話か」です。
- 読者にしっかり読んでもらいたいポイント
- のちのちのストーリーに関連するポイント
- 今現状問題となっているストーリー上のポイント
伏線に関しては丁寧に書きすぎるとかえってくどくなったり、モロバレしてせっかくの驚きポイントを失ってしまったりするので、必ずしも丁寧に書くのが良いとは言えません。
でも、とにかくすべてのシーンを丁寧に書いたのではどこに焦点を当てればいいのかがわからなくなってしまいます。
そもそも必要のないことは書かない
そもそもとして必要のない描写は極力書くべきではありません。
小説は一冊の中にたくさんの物語と世界観を詰め込めるメディアですが、かといってページ数は無限ではない。
そしてなにより、読者の集中力も無限ではありません。
- 書くべきだけど、今はそこまで重要じゃない
- キャラクターの定義づけのために必要な描写だけど、メインストーリーとは直接関係ない
そういう描写に関しては、いっそのこと事実の列挙だけで終わらせてしまうのもありです。
具体的にどういうことかというと、
あれから三年が経った。
○○は○○に行き、○○は○○した。
それから戦争が起こって、気づいたときには最前線の野営地だ。
こんな感じで、間の三年の出来事を簡単に事実の列挙で済ませる。
で、今にいたる過程に必要十分の情報を提示したうえで、メインとなる戦地最前線の話をはじめる。
こういう描写って、ないならないで意味がわからなくなるけど、戦地最前線の今の状況を読みたいのに、そこにいたるまでの過程を長く書かれても読者は飽きる。
だから、必要十分を見極めていかに削るかが重要になります。
事実の列挙ではあまりに無機質になる場合は「会話」を利用する
このストーリーの削りは、事実の列挙でもなんとかなりますが、それではあまりに無機質だという場合はちょっとした工夫をするのもありです。
わたしがこれ良いなって思うやり方は会話文中で事実の列挙を行うこと。
ちょっと上級者向けではありますが、くどくならずに自然と情報を提示できるので非常に効果はあります。
たとえばこんな感じ【実例】
あれから三年が経った。
「お前、北の山岳国家から来たんだって?」
「うん。内戦がひとまず終わってね。でも今度は他国との戦争だよ」
「ああ、知ってる知ってる。とんでもなく強い英雄が愚王を倒して拍手喝采されたらしいな」
遠くに今晩泊まる予定の野営地が見える。ここからでもわかるが、どうやら満員らしい。
「まあ、せっかく祖国が落ち着いたってんなら、お前もこんなところで倒れたくはねえだろう」
「まったくだね」
こんな感じで、キャラ同士の会話の中で三年の間になにが起こったかをさりげなく匂わせる。
そうすると地の文で延々と事実を列挙されるよりも、よりすんなり過程の話が入ってきます。
会話(というか人が話す言葉)って不思議と人間の注意を引くんですよね。
妙な捉え方かもしれませんが、人の動物的な本能が、別の人(生き物)が発する言葉にちゃんと注意を向けるようにできているんだと思います。
そして小説においては「」(かぎかっこ)が会話を表すことがほぼ100%に近い共通認識なので、
- はい、会話文ですよ、よく聞いてくださいね
みたいな適度な注意喚起を本能的に訴える形ですごく簡単にできます。
なので会話文をうまく使うと、単なる事実の列挙では集中力が途切れてしまいそうな(あるいは読み飛ばしてしまいそうな)情報に関しても、短くしっかりと伝えることができます。
メインは丁寧に、必要だけどメインじゃない部分は短く
見極めが少し難しいですが、しっかりと内容が詰まった小説を書きたいなら、こういう細かな「削り」こそが作品の質を上げる至高のプロセスです。
案外最初のほうは書きたい部分を殴り散らすことが多いので意外とうまくいってることがあるのですが、書くことに手馴れてきた中級者あたりはかえって丁寧に書くあまり逆に冗長になってしまうことがあります。

個人的な備忘録として記事にしましたが、「なんかしっくりこないな」と思ったときはストーリー(内容)の「削り」を意識してみると良くなるかもしれません。
もう一度言いますが、
- 読者にしっかり読んでもらいたいポイント
- のちのちのストーリーに関連するポイント
- 今現状問題となっているストーリー上のポイント
このあたりを意識しながら、長く書く必要がない部分は思い切って短くしてみましょう。