小説で良いバトルシーンを書くための3つのポイント
やあ、葵です。(@Aoi_Yamato_100)
いつだってバトルシーンがカッコイイ小説を書きたい。
というわけで今回はかっこいいor燃えるようなバトルシーンを小説でどう描くのかを考察してみます。
で、そもそも小説における良いバトルシーンというのはどんなものを指すのでしょうか。
結論から言うと次の3点がちゃんとある文章のことです。
- スピード感
- 迫力
- なにをしているか文章だけでわかる
そうは言っても「じゃあ実際にどうすれば?」という方のために、反省と備忘録をかねて説明してみたいと思います。
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小説で良いバトルシーンを書くためには
さて、まずは「小説で良いバトルシーンを書く」という行為について前提をお話します。
その前提というのは――
そもそも小説はバトルシーンを書くことにあまり向いていない。
元も子もないな!
でも、だからこそ試行錯誤しながら「どうすれば燃えるのか」「どうすればカッコイイか」「どうすれば読みやすいか」を考えるのが楽しいんじゃありませんか。
話が脱線しましたが、実際のところマンガやアニメと比べると当然「文章だけ」ですべてを表現する小説は迫力とかスピード感とかを出すのが苦手です。
一番強いのはもちろんアニメで、わたしもスピード感や迫力のあるアニメの戦闘シーンが大好物です。
では、そういうカッコイイ戦闘シーンをどうやって小説で表現すればいいのでしょうか。
まずはスピード感をいかにして出すか
たとえばの話。
バトルに入ったキャラクターが、拳を繰り出すのに二行も三行もかかっていたら「早く進めよ……!」ってなりますよね?
小説は文章だけで状況を表現しなければいけない関係上、どうしてもキャラクターの動きや位置関係などが説明くさくなってしまいます。
たとえば(悪い例)
- Aは正面にいるBに右手で作った拳を繰り出した。
- Bは左手を前に出してそれを受け止めた。
- Aは止められた拳を引き、すぐにBに向かって右足で蹴りを繰り出した。
- Bは同じく左脚でそれを受け止めた。
別に間違った文法を使っているわけでもないのに、すべての動きについて細かく文章で表現しようとすると、どうしても説明くさくなってスピード感が損なわれます。
スピード感は「省略」を駆使する
さて、上に書いた悪い例ですが、ぶっちゃけた話をするとこんなの書いても読者の1割もすべては読みません。
読者は戦いがはじまったことを知っています。
そのうえでどちらが勝つのかを知りたがっています。
でもその動きの一つ一つまでは別に知りたがってはいないのです。
だから、省略を駆使することにしましょう。
たとえば(良い例)
- Aは拳を繰り出した。
- Bがそれを止める。
- すかさずAは蹴りを繰り出した。
- だがBには当たらなかった。
変化をわかりやすくするために同じ行数を使いましたが、実際はこれでも説明くさいので、Bの動きをAの動きの行にまとめてしまってもいいと思います。
たとえば(もっと良い例)
- Aは拳を繰り出したがBはそれを止める。
- すかさずAは蹴りを繰り出したが、やはりBには当たらなかった。
で、ここで注目してほしいのが、
悪い例と比べて描写はおおざっぱになっているが、想像するシーンはそう大差ないということ。
むしろ、読者の想像力(見てきたバトルシーンの蓄積)が豊かな場合は、「Aは攻撃した」「Bは防御した」の2つの文章だけで実は脳内で多彩な戦闘シーンが繰り広げられる場合があります。
そう、以前にもお話しましたが、戦闘シーンは読者の想像力で補完してもらったほうが効率的なのです。
文章はあくまで動作の確定のみに留める。
おおまかな「誰がなにをしたか」だけで、あとは「ご想像にお任せします」というわけだな。
この省略が使えると、文章は当然短くなるし、読者側の読む速度があがるのでモッサリ感も減ります。
シーンもどんどん先に進み、読者の「早く先が知りたい」を強く抑えることなくページをめくらせることができるでしょう。
ちょっと慣れてる人向け!
- 〇〇が〇〇を使った。
- 〇〇が〇〇する。
というような文章を、
- 〇〇を使った。
- 〇〇。
とすると、さらにリズム感とスピード感が出る。
「テンポの良いバトルシーンを書くには!」でよく言われる「主語の省略」と「体言止め」を駆使した例です。
迫力は情報の蓄積から生じる
バトルシーンの迫力というものは、少なくとも小説においては情報の蓄積から生じます。
つまりどういうことだ?
ただパンチしたって迫力なんてないよね。
そうだな。
でもその一撃が99回止められたあとの渾身の一撃だったらなんか迫力でない?
もちろん、そのパンチがいかに強烈な威力を誇っているのかを「大地が割れた」とか「山が吹き飛んだ」とかで表現しても良いとは思います。
でも、それを説明するためにも文章はいくつか増えるし、毎度毎度「そのパンチは〇〇だった」「〇〇のようなパンチ」みたいな修飾語がくっついてても読みづらいしくどくないですか?
だから、文章そのものよりもそこまでの状況、あるいは情報の蓄積を発散させるようなバトルを描く、というのが、スピード感を損なわず、かつ迫力にも繋がるもっとも重要なやり方だと思います。
繰り返しますが、「そのパンチがいかに見た目的にすごいか」よりも、「そのパンチがいかに重い一撃か」をそこまでの流れで読者に把握させたほうが迫力のある戦闘シーンには重要です。
迫力はカタルシス
だからバトルシーンの迫力は、バトルシーンそのものの描写よりも、そこにいたるまでのストーリーを作るべきです。
- 相手は誰なのか。
- 主人公はどうしてそいつと戦っているのか。
- なぜそこでその一手を取ったのか。
こうした因縁めいたものを伏線として張っておく。
そのうえでここぞという迫力を出したいシーンでそこまでの伏線を回収する。
謎が解けたときの解放感。失敗を重ねたところからの成功。そして喜び。
物語におけるカタルシスは、発揮されるのがバトルシーンであればそれがそのまま迫力に繋がります。
だから、バトルシーンもメインとなるストーリーラインと関連付けるようにして書いたほうが、迫力は生まれやすいのです。
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まとめ
最初にあげたポイントを踏まえて再度考えてみるとこうなります。
- スピード感=省略の駆使
- 迫力=そこに至るまでの情報の蓄積
- なにをしているか文章だけでわかる=どこまで省略していいかの判断
省略というのはとても強力な文章作法ですが、それにかまけすぎると「なにをしているのかわからなくなる」という状況におちいりがちです。
ですので、どこまで省略すべきか、どの動作の説明が必要か、というのは常に考えながら省略を使うように心がけましょう。
実際に良いバトルシーンが多い小説
86―エイティシックス― (電撃文庫)
おすすめ度
(すばらしい)
比較的最近のライトノベル。死と隣り合わせの戦場にあって、バトルのスピード感、迫力、ともにすばらしい出来でした。オススメの一冊。
エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)
おすすめ度
(とても良い)
こちらもオススメ。独特な戦闘兵器が主力という前提ゆえに、戦闘の概念そのものが最初から高速化しているので、多少文章が装飾されていてもスピード感を損なわないどころか、むしろよりいっそうのスピード感を得られる。