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百魔の主/漫画版

創作研究室(カテゴリー別)
葵大和
ライトノベル作家
カドカワBOOKSから『百魔の主』というファンタジー戦記小説を刊行しています(既刊6冊)。またコミカライズ版が秋田書店のweb漫画サイト『マンガクロス』にて連載中です。執筆歴は15年。最近はブログ書いたりもしています。うんち。
出版作品(小説/カドカワBOOKS)

百魔の主/葵大和

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小説で良いバトルシーンを書くための3つのポイント

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やあ、葵です。(@Aoi_Yamato_100

いつだってバトルシーンがカッコイイ小説を書きたい。

というわけで今回はかっこいいor燃えるようなバトルシーンを小説でどう描くのかを考察してみます。

で、そもそも小説における良いバトルシーンというのはどんなものを指すのでしょうか。

結論から言うと次の3点がちゃんとある文章のことです。

  1. スピード感
  2. 迫力
  3. なにをしているか文章だけでわかる

そうは言っても「じゃあ実際にどうすれば?」という方のために、反省と備忘録をかねて説明してみたいと思います。

この記事の著者について(葵大和)
葵です
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小説で良いバトルシーンを書くためには

さて、まずは「小説で良いバトルシーンを書く」という行為について前提をお話します。

その前提というのは――

そもそも小説はバトルシーンを書くことにあまり向いていない。

元も子もないな!

でも、だからこそ試行錯誤しながら「どうすれば燃えるのか」「どうすればカッコイイか」「どうすれば読みやすいか」を考えるのが楽しいんじゃありませんか。

話が脱線しましたが、実際のところマンガやアニメと比べると当然「文章だけ」ですべてを表現する小説は迫力とかスピード感とかを出すのが苦手です。

一番強いのはもちろんアニメで、わたしもスピード感や迫力のあるアニメの戦闘シーンが大好物です。

では、そういうカッコイイ戦闘シーンをどうやって小説で表現すればいいのでしょうか。

まずはスピード感をいかにして出すか

たとえばの話。

バトルに入ったキャラクターが、拳を繰り出すのに二行も三行もかかっていたら「早く進めよ……!」ってなりますよね?

小説は文章だけで状況を表現しなければいけない関係上、どうしてもキャラクターの動きや位置関係などが説明くさくなってしまいます。

たとえば(悪い例)
  1. Aは正面にいるBに右手で作った拳を繰り出した。
  2. Bは左手を前に出してそれを受け止めた。
  3. Aは止められた拳を引き、すぐにBに向かって右足で蹴りを繰り出した。
  4. Bは同じく左脚でそれを受け止めた。

別に間違った文法を使っているわけでもないのに、すべての動きについて細かく文章で表現しようとすると、どうしても説明くさくなってスピード感が損なわれます。

ちなみに文章の構造上、基本的に主語は一つになる点にも注意。小説はAとBという二人のキャラクターの動作を同時に表現することがとても苦手です。

スピード感は「省略」を駆使する

さて、上に書いた悪い例ですが、ぶっちゃけた話をするとこんなの書いても読者の1割もすべては読みません。

読者は戦いがはじまったことを知っています。

そのうえでどちらが勝つのかを知りたがっています。

でもその動きの一つ一つまでは別に知りたがってはいないのです。

だから、省略を駆使することにしましょう。

たとえば(良い例)
  1. Aは拳を繰り出した。
  2. Bがそれを止める。
  3. すかさずAは蹴りを繰り出した。
  4. だがBには当たらなかった。

変化をわかりやすくするために同じ行数を使いましたが、実際はこれでも説明くさいので、Bの動きをAの動きの行にまとめてしまってもいいと思います。

たとえば(もっと良い例)

  • Aは拳を繰り出したがBはそれを止める。
  • すかさずAは蹴りを繰り出したが、やはりBには当たらなかった。

で、ここで注目してほしいのが、

悪い例と比べて描写はおおざっぱになっているが、想像するシーンはそう大差ないということ。

むしろ、読者の想像力(見てきたバトルシーンの蓄積)が豊かな場合は、「Aは攻撃した」「Bは防御した」の2つの文章だけで実は脳内で多彩な戦闘シーンが繰り広げられる場合があります。

そう、以前にもお話しましたが、戦闘シーンは読者の想像力で補完してもらったほうが効率的なのです。

文章はあくまで動作の確定のみに留める。

おおまかな「誰がなにをしたか」だけで、あとは「ご想像にお任せします」というわけだな。

この省略が使えると、文章は当然短くなるし、読者側の読む速度があがるのでモッサリ感も減ります。

シーンもどんどん先に進み、読者の「早く先が知りたい」を強く抑えることなくページをめくらせることができるでしょう。

この省略は、文章の形そのものにも適用できます。

ちょっと慣れてる人向け!

  • 〇〇が〇〇を使った。
  • 〇〇が〇〇する。

というような文章を、

  • 〇〇を使った。
  • 〇〇。

とすると、さらにリズム感とスピード感が出る。

「テンポの良いバトルシーンを書くには!」でよく言われる「主語の省略」「体言止め」を駆使した例です。

ただし主語の省略はやや難易度が高いので注意。誰が行ったか、が読む人に必ずわかるようになっているのが前提です。

迫力は情報の蓄積から生じる

バトルシーンの迫力というものは、少なくとも小説においては情報の蓄積から生じます。

つまりどういうことだ?

ただパンチしたって迫力なんてないよね。

そうだな。

でもその一撃が99回止められたあとの渾身の一撃だったらなんか迫力でない?

もちろん、そのパンチがいかに強烈な威力を誇っているのかを「大地が割れた」とか「山が吹き飛んだ」とかで表現しても良いとは思います。

でも、それを説明するためにも文章はいくつか増えるし、毎度毎度「そのパンチは〇〇だった」「〇〇のようなパンチ」みたいな修飾語がくっついてても読みづらいしくどくないですか?

だから、文章そのものよりもそこまでの状況、あるいは情報の蓄積を発散させるようなバトルを描く、というのが、スピード感を損なわず、かつ迫力にも繋がるもっとも重要なやり方だと思います。

繰り返しますが、「そのパンチがいかに見た目的にすごいか」よりも、「そのパンチがいかに重い一撃か」をそこまでの流れで読者に把握させたほうが迫力のある戦闘シーンには重要です。

迫力はカタルシス

だからバトルシーンの迫力は、バトルシーンそのものの描写よりも、そこにいたるまでのストーリーを作るべきです。

  • 相手は誰なのか。
  • 主人公はどうしてそいつと戦っているのか。
  • なぜそこでその一手を取ったのか。

こうした因縁めいたものを伏線として張っておく。

そのうえでここぞという迫力を出したいシーンでそこまでの伏線を回収する。

謎が解けたときの解放感。失敗を重ねたところからの成功。そして喜び。

物語におけるカタルシスは、発揮されるのがバトルシーンであればそれがそのまま迫力に繋がります。

だから、バトルシーンもメインとなるストーリーラインと関連付けるようにして書いたほうが、迫力は生まれやすいのです。

まとめ

最初にあげたポイントを踏まえて再度考えてみるとこうなります。

  • スピード感=省略の駆使
  • 迫力=そこに至るまでの情報の蓄積
  • なにをしているか文章だけでわかる=どこまで省略していいかの判断

省略というのはとても強力な文章作法ですが、それにかまけすぎると「なにをしているのかわからなくなる」という状況におちいりがちです。

ですので、どこまで省略すべきか、どの動作の説明が必要か、というのは常に考えながら省略を使うように心がけましょう。

実際に良いバトルシーンが多い小説

86―エイティシックス― (電撃文庫)

おすすめ度

(すばらしい)

比較的最近のライトノベル。死と隣り合わせの戦場にあって、バトルのスピード感、迫力、ともにすばらしい出来でした。オススメの一冊。

エスケヱプ・スピヰド (電撃文庫)

おすすめ度

(とても良い)

こちらもオススメ。独特な戦闘兵器が主力という前提ゆえに、戦闘の概念そのものが最初から高速化しているので、多少文章が装飾されていてもスピード感を損なわないどころか、むしろよりいっそうのスピード感を得られる。

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