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小説『総理の夫』が面白い!軽快な語り口の中に熱さと温かさと爽やかさ

総理の夫の感想

やあ、(百魔の主を書いている)葵です。(@Aoi_Yamato_100

原田マハ氏著、『総理の夫』を読みました。

タイトルからひしひし伝わってくるとおり、題材は政治家の話です。

しかしこの小説の面白いところが、

初の女性総理大臣の夫の手記

として物語が語られるところ。

そしてこの手記の語り口が軽妙で、政治家をテーマにしているにも関わらず非常にエンタメ性が高いものになっている。

くっそ読みやすい上に気づいたら引き込まれている。

章の区切りが「〇〇年〇〇月」みたいな手記調になっていますが、基本的に普通の小説と同じような一人称視点の語り口なので、そこは身構えず読むことができます。

ともあれ、そんなわけで今回は『総理の夫』を読んだ感想をば!

小説『総理の夫』の概要

あらすじ

20××年、相馬凛子(そうま・りんこ)は42歳の若さで第111代総理大臣に選出された。鳥類学者の夫・日和(ひより)は、「ファースト・ジェントルマン」として妻を支えることを決意。妻の奮闘の日々を、後世に遺すべく日記に綴る。税制、原発、社会福祉。混迷の状況下、相馬内閣は高く支持されるが、陰謀を企てる者が現れ……。凛子の理想は実現するのか!? 痛快&感動の政界エンターテインメント!「凛子のようにしなやかでピュアな女性政治家が、世界を変えることができるのかもしれません」(安倍昭恵氏、解説より)

2013年に刊行された作品。ジャンルとしては政治・恋愛・エンタータインメントに該当とのこと(wiki先生より)

総理の夫を読んだ『読者』としての感想

めっちゃ面白いなこれ!

最初、『総理の夫』というタイトルから硬めの物語なのかとやや身構えていました。

ところが、冒頭の入り、特にその総理の夫の語り口に、すぐさま、

(あっ、これエンタメとしての戦闘力がすごく高そう)

と認識を改めた次第。

とにかく読みやすい

けっして文章が単調だとか、語句が稚拙だとか言っているわけではありません。

政治をテーマにするだけあって、社会の授業で習ったような小難しい政治用語が飛び交います。

しかし、作中で「おめでたい人」と称される純朴の極みにある主人公・相馬日和(そうまひより)の軽快な語り口によって、すらすらと読み進めることができる。

これは、

  1. 難しい言葉を使って書くこともできるけど
  2. それを意識的な文章の書き方によって
  3. 読みやすくしている

という感じ。

一応読者としての感想ではあるのですが、あまりに文章が良くて思わず作家的に「うおっ、すげぇ」と思ってしまった。

あと、内容のフォーカスが政治そのものというより、初の女性総理大臣となった明朗快活な主人公の妻・相馬凛子の様子と、彼女を取り巻く環境に当たっているのもテーマに比して読みやすい理由の一つだと思いました。

日本の政治を描きつつ、一組の夫婦のなにげない暮らしの様子も描かれる

無論、すべてにおいて一般的であるとはいいがたいですが、総理とその夫という立場でありながら、

どこにでもいるような、温かく、ときにずきりと来る夫婦の在り方

が描かれます。

ちなみに先に言っておくと、『総理の夫』はめちゃくちゃ読後感が良いです。

それでも、そのハッピーエンドにつなげるまでに、当然ながらいくつかの試練があるわけで。

中盤に差し掛かるあたりで「おや……?」とその不穏な気配を察知したりするのですが、ぜひそこは気合で乗り切って読み進めてほしい。

夫婦の在り方、恋愛、家族の繋がり――

そういった人と人とのつながりが作る大きな感動が、絶対に最後にはあなたの心を動かす。

主人公の純朴さがテーマを和らげる

政治をテーマにしているだけあって、なかなか小難しかったり、変な話、ちょっと人間の汚さが見えたりもするのですが、

そうしたテーマを主人公・相馬日和の純朴さが和らげてくれます。

野鳥の観察が趣味で、研究員としてもそれを仕事にしている相馬日和は、どことなく頼りない三十代男性。

けれど、三十代男性にしては裏表がなく、まさしく純朴たる性格。

総理になる妻の凛子もまた、明朗快活で裏表がない。

しかし彼女の場合は、おそろしいまでのエネルギッシュさと辣腕を持っているため、根っこの方では似ているけれど、感じられる雰囲気はまるで違います。

どこまでも一直線に目標へまい進する妻・凛子に引っ張られながらも、そっと彼女を支え続ける主人公日和にとても好感が持てました。

中盤でひと悶着あるけど、そこからは怒涛の感動の嵐

正直テーマがテーマだけにどこでそんなに感動するのか、という疑念も少しだけあった。

けれど、ふたを開けてみれば感動の嵐である。

中盤でのやきもきも気づけばカタルシスのスパイスに。

最後にかけての怒涛の追い上げで、思わず日和ばりに涙腺が緩くなりそうな自分がいました。

政治家をテーマにしているけれど、物語としての根本は『人と人とのつながり』

夫婦愛や家族愛などの良さを、見事にテーマに落とし込んだ物語でした。

それでいて夫婦愛や家族愛の魅せ方が、けっして安っぽくないのがさらに良いところだった。

下手に見せるとかえって安っぽくなりがちな『繋がりの大切さ』を、政治家の在り方などのちょっと小難しいテーマと掛け合わせて、非常にバランスよく描き切った、という印象です。

総理の夫を読んだ『作家』としての感想

もう結構『読者としての感想』のほうにも書いちゃったんだけど、やっぱり文章がとことん読みやすいと感じました。

一人称視点の有用性/感情の同期

一人称視点の強みとして、作中の感情揺れポイントで読者の感情を動かしやすいというのがあります。

一度入り込ませてしまえばこちらのもの。

悲しい出来事が起これば苦しくなるし、楽しい出来事があれば楽しくなる。

問題は『どうやって感情が同期するところまで読ませるか』。

その点『総理の夫』は軽快な語り口が非常にその助けになっているように思いました。

まあやろうと思って出来ることじゃないんだけどな。

文章のリズムがものすごく良い

軽快な語り口と一言にいっても、いろんなタイプがあります。

口語調であるとか、語句が現代的であるとか。

総理の夫』の地の文は、中でもとにかくリズムが良い

使われる語句は必ずしもすべて平易というわけではない。

ただ、とにかくリズムが良い。

一文一文のつながりが流麗で、気づいたら次の行を読んでしまっている、という感じ。

まあこれも簡単にできることじゃないんだけどなッ‼
そればっかだな!

そこまでクセも強くないので、『読みやすい文章書きたいなぁ』と思ってる人は真似してみると良いかもしれない。

句読点とかに驚くほど違和感を持たなかった小説なので、参考になると思う。

小説の文章力を最速で上げる方法【おすすめの書き方と習慣】

小説の自由度について考えさせられた

私は『総理の夫』を読んで、小説の在り方の自由度について考えさせられました。

日和はたしかに物語の語り手ではありますが、強い動機を持った主人公ではありません。

共感が持てる良いキャラクターではありますが、みずから強い動機を持って物語を動かしていく人物ではありませんでした。

それでも、終始一貫して『総理の夫』は面白い。

この主人公ではないキャラクターが語り手として物語を描いていく、という手法は、実はとても自由度の高い技法であると思います。

そのあたりについては下記の記事でつらつらとしたためたので、気になる人は読んでみてください。

小説の語り手は主人公でなくても良い小説における語り手は必ずしも『主人公』でなくても良いって話

『総理の夫』の感想:まとめ

とまあそんな感じで『総理の夫』の感想でした。

ご存じのとおり私はファンタジーラノベ作家なので、どうしても読む作品はファンタジーとかSFとか、和風怪異系とかに行きがちなんですが、今回はちょっといつもと違う選出。

確かに珍しいな。なんでこの本を手に取ったんだ?
……。
~♪
……。

私は基本的になんでも読みますが、とはいえ自分で選ぶと好きなジャンルに偏ってしまうので、『面白かったよ!』と教えてくれる身近な人は大切だなぁ、と思った今日このごろ。

面白いから気になった人は読んでみてね