軍記系ファンタジー漫画『パンプキンシザーズ』の魅力について
やあ、葵です。(@Aoi_Yamato_100)
今回紹介するマンガは軍記×ファンタジーな漫画、『パンプキンシザーズ』岩永亮太郎 (著)(Pumpkin Scissors)です。
パンプキンシザーズの魅力は数多くありますが、基本的に軍事系の物語が好きな人にはおすすめ。
また、熱や魂のこもったセリフ回しにしびれたい、という人にもぜひ手に取っていただきたい作品です。
私はかなり鳥肌が立ったシーンがいくつもありました。
タップできる目次
簡単なあらすじ
それは、戦災という名の“もうひとつの戦争”!!帝国陸軍情報部第3課、“復興”を担うモノたち。通称――PumpkinScissors(パンプキン・シザーズ)!!永き戦乱により荒廃しきった帝国各地。停戦後の3年間を奔走(ほんそう)するパンプキン・シザーズだが、なかなか成果は挙がらぬまま……。しかしある日突然現れた、大重量の単発拳銃を片手で操る“巨漢の復員兵”が、この国の《運命》を変えていく――!!!!
(Amazon公式紹介文)
お話のメインとなるのは作中における大きな戦争のあと――つまりは戦後のお話。
とはいえ、戦後というとさも平和になったかのようなイメージを抱きかねませんが、実際はよりねばりつくような、厄介な戦いが続いています。
この戦争の余波が色濃く残る世界で、とある強靭な『兵士』と、とある筋金入りの『貴族(兼軍人)』が、時に愉快で、時に頼りになる仲間たちと共に本当の戦災復興を目指すというお話。
魅力と見どころ
リアリティのある世界設定
パンプキンシザーズはファンタジー作品です。
架空の世界の、架空の戦争の、その後を描いています。
とはいえ、まったく現実世界とかけ離れているわけではなく、現実においても確かに存在した貴族制度や、銃器、兵器などが多く出てくるため、史実系の戦記モノにかなり近しい要素があります。
そしてそういった要素を過不足なく、違和感なく作中で描いているので、かなり世界観にリアリティがあるのが面白さの一因です。
キャラクター性の高さ
後述するセリフ回しの鋭さに通ずることでもありますが、パンプキンシザーズの登場人物は非常にキャラクターが立っています。
それぞれのバックボーンが時に丁寧に、時にほのめかすように描かれ、そのバックボーンからブレることなく各々のキャラクターが独自に思考し、発言しています。
このキャラクター性(特徴)の高さと、その内面がブレなく描かれていることが、作品により強いリアリティを与え、読む側に没入感をもたらします。
個人的にはオレルド准尉と「正義‼(ジャスティス)」が好き。(本編読了のほど)
セリフ回しの鋭さ、熱さ
個人的に、最初は戦後という世界観の設定と、それにまつわるヒューマンドラマの描き方が一番好きな要素だったのですが、最新刊まで読んで、この作品のセリフにこもった熱量に最も胸を打たれる形になりました。
特に『アンチアレス編』と呼ばれる反帝国主義のテロリストたちとの戦いを描いた部分で、作者である岩永先生のセリフ力が爆発したように思います。
ぜひアンチアレス編まで読み切っていただきたい。
正義ッ‼
まとめ
とまぁそんな感じで最近になってパンプキンシザーズを読み、とても興奮したのでレビューをしました。
本作の注意点としては、2019年の最新刊発行以降、作品が長期休載に入ってしまっている点です。
次が読みたくて読みたくてたまりませんが、現状出ている最新刊まででもかなり楽しめる作品ですので、気になった人はぜひ手に取ってみてください。
余談:休載について(同じ作家としてのあれこれ)
これは完全に憶測で、もし違っていた場合は大変失礼なことではあるのですが、せっかくこういう場なので休載の理由についてなんとなく予想してみたいと思います。
これは私が「なんとなくこんな感じがした」という程度のものなので、流し読みしてください。
アンチアレス編に熱量と魂を込めすぎたのでは説
セリフ回しの項でも述べましたが、忖度なく言って、アンチアレス編の熱量は異常でした。
これは私が勝手にそう感じ取っただけなので、もしかしたら岩永先生にしてみればそんなつもりはなかったかもしれませんが、ぶっちゃけ燃え尽きてもおかしくないレベルの熱量が込められていた気がします。
主人公格二人が『答え』を見つけてしまったから
そしてまた、この熱量がこもりまくったアンチアレス編にて、アリスとランデルという主人公格である二人がそれぞれの人生における答えのようなものを見つけました。
アリスは『戦災復興とはなにか?』について。
ランデルは『生きる意味』について。
このパンプキンシザーズという物語は、戦災の残る世界そのものを描いていると同時に、このアリスとランデルという二人の主人公たちの『悩み、もがき、それでも前に進もうとする姿』を描いています。
アンチアレス編において、それまで悩みに悩みぬいてきた二人が、それぞれの生き方の答えのようなものを見つけました。
この時、なんとなくですが物語自体が若干ゴールテープを切りかけたかのような印象を覚えました。
これは私の場合ではあるのですが、特に難しい命題をキャラクターや物語に与えたとき、書き始めの時点では私自身その答えを知りません。
物語を描きながら、主人公たちとともに一緒に考えている、という感じです。
そしてそれがある時『答え』にたどり着くと、やっぱり少しゴールに到達した気分になります。
もしパンプキンシザーズという物語と、その主人公たちに与えられた命題が同じ構造であったならば、このアンチアレス編において二人が『答え』を見つけたことで、作者自身の物語への推進力のようなものがいったん落ち着いてしまったのではないか、という予想が少しあります。
――と、好き勝手にあーだこーだと述べましたが、実際はほかの原因によってかもしれませんし、岩永先生自体、もっと描きたいと燃えているかもしれませんので、あくまで一読者の身勝手な予想として置いておいていただけると幸いです。
結論:早く続き読みてぇ。