人が『面白さ』を感じるのはどんな時か?【論理的に分析してみた】
やあ、葵です。(@Aoi_Yamato_100)
『おもしろい』ってなんでしょうね?
世の中にはたくさんの『おもしろい』があふれています。
人によってなにを『おもしろい』と思うかに差はありますが、多くの人に『おもしろい』と思われるものは各分野で時代を席巻することも多いです。
わたしは小説家なので、物語に対する『おもしろい』についてずっと考えていました。
この記事では、そんなわたしが考える『おもしろい』の正体を、できるかぎり論理的にまとめてみたいと思います。
結論からいうと、いかに人間の感情に作用するかが重要だと思います。
ちなみにわたしの『おもしろい』に関する一番古いメモはこれ。
読者から見た『おもしろさ』と、自分の享受できる『おもしろさ』を両立すべく悩みに悩んでいるさまが見て取れる。
2014年だから『百魔の主』が書籍化するよりさらに前だね。まだアマチュアだったときにもこんなことを考えていたようです。
『おのれの感性を信じろ』
恥ずかしいからやめてっ!
タップできる目次
どんなときに『おもしろい』と感じるのか
あなたはどんなときに『おもしろい』と感じるでしょうか。
- 気分が高揚したとき
- 知的好奇心が満たされたとき
- 達成感を得られたとき
- 嫌なことを忘れて熱中できたとき
いろいろあると思いますが、こういったものに共通するのは感情的であることです。
『おもしろい』は感情の作用である
あなたが楽しいと思うとき、もしそれが物語を読んでいてのことだったら、その物語は『おもしろい物語』といってさしつかえありません。
つまるところ、『楽しいもの』は『おもしろいもの』なのです。
そして楽しいというのは、人間の感情の作用によるものです。
だからこそ、『おもしろい』について考えるときは、人間の感情について知っておかなければなりません。
『おもしろい』にまつわるポジティブな感情の作用
ポジティブな感情の作用にはこんなものがあります。
- 楽しい
- 嬉しい
- 快感
- 心地いい
たとえば物語を作るうえで参考にできそうなのは、①の楽しい、②の嬉しい、③の快感です。
楽しいと嬉しいに関しては同じ作法になるのでまとめて説明します。
『楽しい』と『嬉しい』
どんなときに人は楽しいと感じるでしょうか。
- 仲の良い友達と遊んでいるとき
- 好きなゲームをしているとき
- 趣味に没頭しているとき
ほかにもいろいろあると思いますが、これらのどれもが楽しいと思うものです。
こうした『楽しさ』を使って『おもしろい』を再現するには、その状態を疑似体験してもらう必要があります。
そう、感情移入ですね。
基本的に感情移入先は主人公になる。というか主人公にしなければならない。
読者が主人公に感情移入した状態で、その主人公が『楽しい』と思う状態になったとき、読者もまた楽しくなります。
そのとき読者はその物語を面白いと感じます。
嬉しいについても同じで、たとえば、
- 好きな子に告白された
- 友達にプレゼントをもらった
- 誰かに親切にしてもらった
こういった、誰もがうれしいと思う状態を、感情移入させた状態で見せることが重要です。
『快感』について【食欲・性欲・睡眠欲】
人間は快感を覚える生き物です。
人間には非常に多くの欲求があり、その欲求が満たされたとき快感を覚えます。
- 食欲
- 性欲
- 睡眠欲
一般的に三大欲求と呼ばれるものがこの3つです。
グルメものが常に市場に残る理由【食欲】
グルメものの作品というのは、非常に息の長い作品が多いです。
そして市場には必ずグルメものが残り続けます。
この理由は人間の絶対なくならない欲求のひとつである『食欲』をテーマにしているからでしょう。
おいしい料理の描写。おいしい料理を食べたときの感動。
そういったものを描いているので、一定の『おもしろい』を担保できているのです。
エロは不滅である【性欲】
『食欲』と同じ理由で、『性欲』をテーマにした作品に関しても市場では不滅です。
ラブコメしかり、ハーレムしかり、根底に人間の性欲にまつわる要素がある作品は、必ず市場に残ります。
ただし、『恋愛』と『エロ』に関しては若干読者への快感の満たさせ方が異なるところもあります。
- 恋愛は疑似体験(感情移入)によって快を覚えさせる
- エロは疑似体験と、そして単純なイメージの想起(描写)によって快を覚えさせる
とはいえ、いずれも『欲求が充足』されたときに『おもしろい』を感じるでしょう。
睡眠テーマの活かし方はいまだ不明である【睡眠欲】
三大欲求の中で唯一『睡眠欲』だけは物語に活かしづらいです。
一方で、新書などでは『睡眠』に関わる本がよくベストセラーになります。
これは現代社会において多くの人が睡眠の質の低下を感じていて、良い睡眠をしたい、この睡眠欲を満たしたいと思っているからです。
あるいは物語の中にぐっすりと気持ちよく眠れる描写を入れると、『おもしろい』にプラスに働くかもしれない。
すやすや……。
実はもう一つ強い欲求が存在する【知的欲求】
三大欲求にまつわるものは市場から絶対になくなりません。
それを満たさなければ人間は生きていけないからです。
しかし、その欲求のほかに、もう一つ人間にとって強い欲求があります。
それが知的欲求と呼ばれるものです。
知的好奇心は三大欲求に匹敵する
人間には『知りたい』と思う気持ちがあります。
そういった『知りたい』をうまく活用しているのがテレビです。
テレビCMって『先が知りたい』と思わせるところで必ず入りますよね。
これは人間の知的好奇心を刺激して、継続的に番組を見させる技術です。
疑問が解決されたとき人間は快を感じる
人間は知的好奇心や知的欲求が満たされたとき快を感じます。
これは達成感が満たされたときとほとんど同じような感覚です。
だからこそミステリーはおもしろいし、『謎』のある物語はおもしろいのです。
そして、たいていの人は『謎』が解決されたときの快感を知っているので(自覚的・無自覚関係なく)、興味を引かれた『謎』はつい解決したくなってしまいます。
これが、物語において先を読ませる強い力になるのです。
読まれるストーリー作りにはミステリー(謎)が欠かせないって話
小説や漫画を読む読者に次々とページをめくってもらいたいなら、謎(ナゾ)を作って見せることがもっとも効果的です。 そう改めて思ったのは、なにげなくテレビを見てい…
『おもしろい』にまつわるネガティブな感情の作用
ところで、人間にはポジティブな感情のほかにネガティブな感情もあります。
- 悲しみ
- 恐怖
- 怒り
- 切なさ
こういったものもまた『おもしろい』に作用する感情です。
ネガティブな感情の効用について
つい涙がこぼれてしまいそうになる感動のシーンってありますよね。
フランダースの犬なんかめちゃくちゃ悲しいじゃないですか。
パトラーッシュ!!
(うるせえ……)
それでもってフランダースの犬って名作ですよね?
強烈な悲しみや切なさも、人の感情に強く作用します。
そして見る人の記憶に強烈に刻み込まれます。
ネガティブな感情は共感との相互作用
ただし、個人的に思うのは、ネガティブな感情は共感との相互作用もあるということです。
- あのシーン悲しかったよね
- あのシーンで泣いた
今やネタにされてきていますが、「全米が泣いた」っていうのもほかの人との感情の共有(共感)が話題性に一躍買っています。
つまり、それを見たほかの人と感情を共有できそうなものは、『おもしろい』という評価に作用しているのです。
SNSとかでよくリツイートされるのも共感性の高いものだよな。
SNSは人間が社会的な生き物であることをひしひしと感じるメディアだよね。
- 怒り
- 切ない
このあたりに関しても『悲しみ』と同じです。
ポチップ
ネガティブな感情に存在する『カタルシス』という作用
「カタルシスってなに?」って人のために簡単な説明を先にします。
カタルシスとは
哲学および心理学において精神の「浄化」を意味する。
アリストテレスが著書『詩学』中の悲劇論に、
「悲劇が観客の心に怖れ(ポボス)と憐れみ(エレオス)の感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果」
として書き著して以降使われるようになったが、アリストテレス自身は演劇学用語として使った。
現代においても、映画や演劇、小説、漫画の批評などにおいて、この表現が用いられている。(出典/wikipedia)
また、かの有名な精神科医ジークムント・フロイトがこの言葉を採用し、代償行為によって得られる満足を指す心理学用語としても用いられるようになりました。
このカタルシスというのは、今でも非常に多く使われる言葉です。
話を戻しますが、このカタルシスの『浄化』は、ネガティブな感情の動きによって起こるものです。
ポジティブな感情では起こせない心の動きを起こさせるという点で、カタルシスという作用は無視できない要素でしょう。
ただカタルシスはいまだに論理的に説明するのが難しいので、興味のある方は精神医学や心理学方面から攻めてみるといいよ。
恐怖だけは少し趣が違う
ネガティブな感情の中でも、恐怖だけは少し性質が異なります。
怖い、というのは人間の生存欲求に非常に近しい感情です。
つまり、三大欲求のさらに上の次元に繋がる可能性を秘めています。
恐怖の効用のもっともわかりやすい例は『お化け屋敷』ですね。
お化け屋敷って、作りものであることがわかっているのに行きたくなるじゃないですか。
怖いってわかっているのに、行く人がいるじゃないですか。
わざわざお金を払ってまで恐怖を感じにいってるの、よく考えるとおかしいですよね?
恐怖の持つ二つの作用
恐怖はそれ自体にドキドキが詰まっています。
この恐怖によってドキドキした状態では、脳内物質であるノルアドレナリンが分泌されます。
おい、なんか話が小難しくなってきたぞ。
なのでくわしくは専門家にぶん投げる。
「恐怖」と「快感」の裏腹な魅力:ホラー作品の人気を脳神経科学と心理学から分析
米国人がホラー映画に支出するお金は1年間に5億ドル。脳神経科学的に見ると、「恐怖」と「快感」は密接に絡み合っている。
最近の研究ではこのノルアドレナリンが長期記憶の定着に関係しているのではないかとも言われています。
とはいえ、読んだあとの読者に対する影響の強さを考えるには多少ながら作用すると思いますが、恐怖のメインとなる作用は次のものです。
恐怖からの解放【感情の落差】
恐怖の持つ力の中で、もっとも強いのはその落差にあります。
人は恐怖から解放されたとき、安心しますよね?
この「安心」も人の感情の中で非常に強いものです。
マズローの欲求五段解説でいう『安全の欲求』。
マズローの心理学を使って説明している記事はこちら!
三大欲求とは少し違いますが、人の感情を表すときによく使われる『喜怒哀楽』。
物語においては喜びも怒りも悲しみも使うことができますが、『楽』に関しては少々テクニックがいります。
というのも、『楽』なだけの物語に起伏が出ないからです。
しかし恐怖を使って、この『楽』を組み込むことができます。
そして『恐怖』と『楽』の落差こそが、人の感情を強く揺り動かし、人に『おもしろい』と思わせる魅力を発揮するのです。
まとめ:人の感情が動かせるものが『おもしろい』
ここまでをまとめると以下のようになります。
ここまでのまとめ
- 人間は感情的な生き物
- 『楽しい』は『おもしろい』
- 感情と欲求は表裏一体
- 三大欲求が強いが『知的好奇心』もそれに匹敵する
- ネガティブな感情も使いようがある
『おもしろい物語』を書くために、『おもしろいってなんだ?』と考えるのは非常に良いことです。
人がなにを『おもしろい』と感じるかは時代と共に変わったりもします。
それでも、常に自分で『おもしろい』を考えるくせをつけると、そういった変化にも対応できるようになるのではないでしょうか。
余談:でも創作で一番大事なのは自分の『おもしろい』だよ
自分が『おもしろい』と思って書いた作品は、同じ『おもしろい』を持つ人に必ず突き刺さります。
作品に込められた熱量って、意外と読む人に伝わるものですよ。
戦略的におもしろいものを作るのも良いですが、まずは自分が楽しむことを忘れないようにしましょう。