小説にテーマは必要か?決め方について作家が実例付きで解説する
やあ、葵です。(@Aoi_Yamato_100)
小説を書こうとして色々調べている中で、『小説を書く時はテーマを決めなさい!』というようなアドバイスに出会うことがあると思います。
実際、私も小説を書くことに慣れてきてからは、改めて小説のテーマについて考えることが増えました。
とはいえ、いかにもテーマが重要そうな純文学作品もあれば、「テーマなんかあるの?」と思ってしまうようなライトノベル作品まで、一口に小説といってもさまざまな形態があります。
そこで今回は、『そもそも本当に小説にテーマって必要なの?』という疑問と、実際にテーマを決めるときに『どうやってテーマを決めればいいの?』という疑問について、実例付きで解説していきたいと思います。
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小説にテーマは必要なのか?【必要性について】
はじめに言っておくと、小説を書くうえで一貫したテーマがあることはとても重要です。
ただし、必ずしもテーマは書く前に決めておかなくてはならないものではありません。この点については『テーマの決め方&見つけ方』の項目でお話しますが、まずは小説としてのテーマはあったほうがいいと覚えておいてください。
それが読んでいてわかりやすいものであろうが、よくよく考えないとわからないような秘められたテーマであろうが同じことです。作品の根底にあるテーマが一貫していることは、書く側にとっても読む側にとってもさまざまなメリットがあります。
テーマが一貫していることのメリット【作者にとってのメリット】
一番のメリットは物語の迷走を避けられることでしょう。
作品のテーマが一貫していると、次の展開や描くべきシーンの取捨選択をする際に指針になります。
- こんなシーンを書きたいけどテーマから逸れる
- こういうシーンはテーマからズレれている
小説を書きはじめてまもない初心者はそこまで考えられないかもしれませんが、小説における『削り』の作業は非常に重要です。
いらないシーンを削るという行為は一見「もったいない」と思ってしまうかもしれませんが、往々にしてあとで良い方向に働きます。
テーマが一貫していることのメリット【読者目線】
読者が求めているシーンや描写というのは、作品ごとにある程度決まっています。
「この作品を読んでいればそういうシーンが楽しめる」と期待しているから続きを読むわけです。
ですので、最初のほうで「この作品はこういう物語を書くよ」という象徴的な出来事を描くこともまた重要になるでしょう。
つまるところ「テーマの明示」です。
たとえば以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 心が温まる物語
- 戦闘がかっこいい物語
- 爽快感を得られる物語
- 緊迫感がある物語
もちろんそれが必ずしも一つでなければならないわけではありません。
しかし、心が温まるような物語を書いていたのに、急にどす黒い人間模様を書いたのでは読者の期待を裏切ることになります。
そして読者の期待を裏切ると、たいていの場合読まれなくなります。
つまるところテーマというのは、作品の中にある感情彷彿の向き(ベクトル)のことなのではないかとわたしは思っています。
どうやってテーマを決めるのか?
たしかにテーマがしっかり定まっている作品は物語の軸がブレませんし、趣旨が一貫しているため読みやすさや熱量の高さに繋がります。
じゃあテーマってどう決めればいいの?
テーマの決め方にもいろいろあります。
- 書いていて気づいたら一貫していることがあった(自然発生)
- はじめに「これをテーマにして書く」と決める(計画的)
また、小説を書く目的の違いでもテーマの決め方は変わってきます。
- 売るために小説を書く
- 楽しむために小説を書く
今回はそのあたりを踏まえて「テーマの決め方」について思うところを書いてみたいと思います。
売るために小説を書くときのテーマの決め方
これは明確で、一般的に受けが良いことをテーマとして最初に決めてしまうことです。
主戦場がネット小説(エンターテイメント小説)であるわたしならば、たとえば、
- 爽快感をテーマにする
- 主人公の成り上がりをテーマにする
- キャラクターの成長をテーマにする
などが人気のあるテーマかな、と思います。
もちろん人が求めるものはその都度変わりますが、「人がどういうときに楽しさ・興味深さを覚えるか」ということを突き詰めていけば、おのずといろいろなテーマが見いだせると思います。
売るために書きたいのであれば、できるだけ多くの人が共感できるor体験したいテーマを見つけて、そのテーマにそって物語をつむぐべきでしょう。
楽しむために小説を書くときのテーマの決め方
一方で、楽しむために小説を書くときのテーマの決め方というのは少し異なります。
そして個人的には(特に初心者の人には)この「自分が楽しむために小説を書く」ときのテーマの決め方を考えてほしいな、と思っています。
というのも、基本的に最初は、楽しむために書かなければ続かないと思っているからです。
それが売るため=ビジネスのためとなると、よけいに重くなります。
そしてぶっちゃけ副業としてや、印税のために小説を書くぐらいなら、ほかのものを探したほうがコストパフォーマンスは圧倒的に良いと思っています。
小説はガチめな副業には向かないぞ!
だからこそ、せっかく小説を書こうと思ったのなら、せめて最初は自分も楽しむために書いてほしいな、と思うのです。
自分の欲求を知ることがとても重要
そしてどういったテーマなら楽しんで書けるのかというと、それは自分の根っこにある欲求をテーマにしたときです。
- 好きに書いていたらテーマが一貫していた
- 好きなことをテーマにしたからうまく書けた
どちらのパターンもあります。
ただ、何作も書くつもりなら、自分の創作の武器(あるいはオリジナリティ)として、自分の書きやすいテーマについて知っておくことは重要だと思います。
そして一つ言えることは、自分の根っこにある欲求や願望は、楽しむために書くときのテーマとしてこれ以上ないということです。
葵大和の場合【テーマについて分析する】
せっかくですのでわたしの場合はどういったことをテーマにしているのかを分析してみます。
まあわたしの場合は、好き勝手に書いていた結果、
なんかいつもこういうの書いてるな。こういうの書いてるとき楽しいし、よく考えるとテーマになってるな。
という状態です。
10年以上いろいろ書いてみて、やっと「楽しく」かつ「熱量を込めて」、「すらすらと書ける」ものを知っておくことが重要だと気づいたのが今。
ずいぶん掛かったな……
だからこそこれから「小説を書こう」と思ってる人にはぜひ今のうちに知っておいてもらいたい。絶対武器になるから。
一例として参考になるとは思うので、よければお付き合いください。
大区分としては「人と人との繋がり」がテーマ
わたしがすらすらとキャラクターやストーリーを書けるのは、たいてい人と人の繋がりを書いているときです。
特に、プラス志向の繋がりを書いているときに筆が乗ります。
よりくわしく細分化すると、
- 血は繋がらないけど兄弟のような男同士の関係
- 友人だけどライバルでもあるような関係
- 家族的な繋がり・絆
このあたりが多いです。
おそらくそれぞれがわたしという個人の根っこにある欲求(願望)の表出なのだと思います。
小区分①:血は繋がらないけど兄弟のような男同士の関係
わたしには兄弟がいません。
いわゆる一人っ子です。
しかし、わたしの周りには兄弟や姉妹がいる人が多くいました。
そしてわたしは幼少時、そんな周りを見て「兄弟がほしい」と思っていました。
もちろん、すべての兄弟が素晴らしい関係性を築いているとはかぎりません。
しかし、それをわかっている今でもなお、仲の良い兄弟が非常に羨ましく感じます。
血のつながらない兄弟のような関係性は憧れ
とはいえ、兄弟は「欲しい」と言ってすぐに得られるものではありません。
幼心にそれもわかっていたわたしは、たぶん血は繋がってなくてもいいからそういう「兄弟的な関係性」を得られないかと一定の妥協の上に願望を抱いたのでしょう。
そして、それが今でもなお個人の欲求として心に根付いているのだと思います。
だから、小説内で主人公とそれ以外の人物の、「血は繋がらないけど兄弟のような関係性」を描くとき、とても楽しいです。
自分の叶えられなかった願望を、小説という形で疑似体験しているのだと思います。
ちなみに『百魔の主』を例にあげると、メレアとシャウとサルマーンあたりの関係性は、こういった部分が表れているのかな、と思います。
小区分②:友人だけどライバルでもあるような関係
一方で、友人でありながらライバルでもあるような関係にも憧れがあります。
同じく『百魔の主』を例にあげると、メレア・ハーシム・セリアスの関係性あたりです。
セリアスも?
正確には「メレアとハーシム」「ハーシムとセリアス」という構図。
このあたりは今まで触れてきたいろいろな創作物の影響もあると思います。
小区分③:家族的な繋がり・絆
また、さらに広い視点で、家族的な繋がりや絆というものにも人並かそれ以上に願望があります。
これについてはけっしてわたしの家庭環境が悪かったとかではないのですが、「家族っていいな」と思うことがよくあります。
基本的に人と人との善性的な繋がりに憧れを抱くのは、人の暗い部分や悪的な部分に敏感だからだと思います。
性悪説まではいかないけど、トマス・ホッブズの『万人の万人に対する闘争状態』に強く共感するくらいには、人の本性というのはいかんともしがたいものである、と思っている。
だからこそ、心から良い関係性を築けている大勢の仲間たち、という状態に強い憧れを抱くのかもしれません。
これは『魔人転生記』や『百魔の主』のどちらにも明らかに共通する項目なので、読んでくださっている人はわかると思います。
まとめ:テーマは自分の根源的な欲求を知り、そこからひねり出す
そんなわけで、基本的にテーマというのは自分の根源的な欲求を知るところからひねり出すのが最もその後の効率が良いと思います。
たびたび書いていますが、小説をビジネスとして書くことはすでに小説を書くことに慣れているプロ並みの人か、そもそも才能があった、という人以外にはかなりつらい行為です。
ですので、まずは小説を書くことの楽しさを知る意味もかねて、自分の「こうだったらいいな」という願望や欲求を好きなように形にしてみてください。
そうして小説を書くことになれてから、もし「商業でたくさん売りたい」と思うのであれば、あらためて「多くの人に好まれるテーマ」を選んで、そのテーマに沿った小説を書いてみるのが良いと思います。
テーマは漠然と決めるのではなく、自分の欲求に根差したもので決める
10年以上書き続けて、あれやこれやと悩みつつ、最近ようやく気づいた大事なことの一つです。